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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)362号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要旨)の各事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、請求の原因三の審決取消事由について判断するに、原告は、本願意匠がその意匠登録出願前公知の意匠となつた引用意匠に類似する意匠であることは争わないとしながら、引用意匠が先に出願中の別件意匠を実施した製品の意匠であり、本願意匠が別件意匠にのみ類似する意匠であることを前提に、本願意匠は、引用意匠が本願意匠の意匠登録出願前公知となつていたにもかかわらず、別件意匠を本意匠とする類似意匠の意匠登録を受けることができるものであるのに、審決は、本願意匠と別件意匠とは、相互に類似する意匠として成立するものではないとした点に誤りがあると主張するので、まず、右前提中の、本願意匠が別件意匠にのみ類似する意匠であるか否かについて検討する。

1 前記争いのない請求の原因一の事実及び成立に争いのない甲第二号証の一によつて認められる本願意匠の意匠登録出願の願書の記載及び願書に添附した図面代用写真によれば、本願意匠は、意匠に係る物品を「ターンテーブル」とするものであり、回転盤枠の頂面に円盤状の回転盤を設けてレコードプレーヤー用ターンテーブルとし、その下面にモーターを設けた構成のものであつて、その基本的構成態様として、回転盤枠は、その周胴面が傾斜面となるよう基本形状を偏心の扁平円錐台環状のものとし、周胴面の前面(正面)側に鍔状のパネル部材を付加して操作部としたものであり、モーターは、直径が回転盤枠の直径より少し小さい扁平円筒形状のモーターカバーを、回転盤枠周胴面の前面(正面)側外周縁が庇状に突出するよう下面中央やや後面(背面)側寄りに設けたものであり、更に、扁平円弧柱状の操作部カバーを、周胴面前面(正面)側の操作部の下面に右モーターカバーから突出するような形で設けたものであること、各部の具体的構成態様として、まず、回転盤枠の周胴面は、操作部のある前面(正面)側が幅広くゆるやかな傾斜面で、後面(背面)側が幅狭く急な傾斜面である偏心の扁平円錐台環状としたものであり、操作部のパネル部材は、周胴面全周の約四分の一(約九〇度)を占める幅広の円弧状(扇形状)のものであり、上方(平面)から見て外周縁を周胴面の外周縁からわずかにはみ出させた態様で周胴面に積載付加されたものであつて、その幅は周胴面とほぼ同じ、高さは周胴面よりわずかに低いものであり、その中央には横長の長方形状のストロボ窓を設け、左側にやや横長の長方形状のスイツチ二個を連続して、更にその左方、左側縁寄りに少し間隔をあけてやや縦長の長方形状のスイツチ一個を各設けたものであること、同転盤の上面(平面)は、基本形状を円板状とし、その中心部に小円を施した回転盤シートを装着したものであること、一方、モーターカバーは、その直径を回転盤枠周胴面の外周縁の約一〇分の八とし、高さを回転盤枠の約二・五倍としたものであり、更に、操作部カバーは、周胴面全周の約八分の一を占め、高さをモーターカバーの約四分の三とし、操作部のパネル部材の下面左側半分に設けたものであり、ストロボ窓の下面にも小さな長方形函状のカバーを設けたものであることが認められる。

これに対し、成立に争いのない甲第五号証によれば、別件意匠は、意匠に係る物品を「レコードプレーヤー用ターンテーブル」とするものであり、回転盤枠の頂面に円盤状の回転盤を設けてレコードプレーヤー用ターンテーブルとした構成のものであつて、その基本的構成態様として、回転盤枠は、その周胴面が傾斜面となるよう基本形状を偏心の扁平円錐台環状のものとし、周胴面の前面(正面)側に鍔状のパネル部材を付加して操作部としたものであること、各部の具体的構成態様として、まず、回転盤枠の周胴面は、操作部のある前面(正面)側が幅広くゆるやかな傾斜面で、後面(背面)側が幅狭く急な傾斜面である偏心の扁平円錐台環状としたものであり、操作部のパネル部材は、周胴面全周の約四分の一(約九〇度)を占める幅広の円弧状(扇形状)のものであり、上方(平面)から見て外周縁を周胴面の外周縁からわずかにはみ出させた態様で周胴面に積載付加されたものであつて、その幅は周胴面とほぼ同じ、高さは周胴面よりわずかに低いものであり、その中央には横長の長方形状のストロボ窓を設け、左側にやや縦長の長方形状のスイツチ三個を連続して、更にその左方、左側縁寄りに少し間隔をあけて同一形状のスイツチ一個を各設け、右側上部に小円柱状のボタンスイツチを設けたものであること、回転盤の上面(平面)は、基本形状を円板状とし、その中心部に小円を施した回転盤シートを装着したものであることが認められる。

2 そこで、本願意匠と別件意匠を対比、検討すると、基本的構成態様のうち、回転盤枠が、その周胴面が傾斜面となるよう基本形状を偏心の扁平円錐台環状のものとし、周胴面の前面(正面)側に鍔状のパネル部材を付加して操作部としたものである点で一致し、各部の具体的構成態様についても、回転盤枠周胴面、操作部のパネル部材の形状が一致し、操作部のスイツチ等の形状、配列等及び回転盤上面(平面)の形状も酷似しているということができるが、基本的構成態様について、本願意匠が、回転盤枠の下面に扁平円筒形状のモーターカバーないしモーター及び扁平円弧柱状の操作部カバーを設けたものであるのに対し、別件意匠はそのいずれも備えていないものである点で差異のあることが認められる。

3 右のとおり、本願意匠と別件意匠は、基本的構成態様において、モーターカバーないしモーター及び操作部カバーの有無の点で差異のあるところ、原告は、この種物品は、その下面には種々の形態が現われることが予想されるものであり、最終的にはキヤビネツト中に納めてレコードプレーヤーとして使用することを前提とするものであるから、この種物品において看者の注意を惹く部分はあくまでキヤビネツト上に現われることになる部分であり、これが要部として意匠の類否判断に当たつて決定的要因となる(したがつて、キヤビネツト上に現われることになる部分の基本形態が共通する両意匠は類似するものである)旨主張するが、この種物品は、完成品であるレコードプレーヤーの一構成部品であつて、完成品においてはモーターカバーないしモーター及び操作部カバーはキヤビネツト上に現われないとはいつても、この種物品がそれ自体として、意匠登録を受けることができる意匠を構成する物品であると認められ、そのままの形で独立して流通におかれ、取引の対象となるものである以上、直ちに、キヤビネツト上に現われることになる部分のみが要部として意匠の類否判断に当たつて決定的要因となるということはできず、両意匠それ自体として全体的に観察して意匠の類否を判断すべきものといわなければならない。

しかして、前記1に説示したところ及び前掲甲第二号証の一によれば、本願意匠におけるモーターカバーないしモーターは、直径が回転盤枠周胴面の外周縁の約一〇分の八、高さが回転盤枠の約二・五倍であつて、しかも、真上から(平面から)観察した場合を除き常に看者の目に入るものであり、操作部カバーは、この種物品にあつて看者の注意を惹きやすい前面(正面)側の操作部下面にあつて、回転盤枠の周胴面全周の約八分の一を占め、高さもモーターカバーの約四分の三であつて、これらは、回転盤枠及び回転盤と比較した大きさ、その位置からみて本願意匠全体において大きなウエイトを占めるものであり、特に、モーターカバーないしモーターは、見方によつては、これが主たる部分であつて、その上に従たる部分である回転盤枠及び回転盤を載せているものとみられるほどのものである。本願意匠は、これらモーターカバーないしモーター及び操作部カバーの存在により、厚みのある鈍重な全体形状を呈するものであるのに対し、別件意匠は回転盤枠及び回転盤のみによる扁平な全体形状を呈するものであつて、両意匠は、この基本的構成態様の相違により全く異なる印象を与えるものであり、この基本的構成態様の相違がもたらす印象の違いが、前示2の回転盤枠、操作部のパネル部材等における共通点のもたらす共通の印象を凌駕して、看者に全く異なる美感を起こさせるものといわなければならない。

したがつて、本願意匠は、全体として別件意匠に類似しないものというべきである。

してみれば、その余の点について判断するまでもなく、本願意匠は、別件意匠にのみ類似する意匠でないことは明らかであつて、別件意匠を本意匠とする類似意匠の意匠登録を受けることができないものといわなければならないから、本願意匠と別件意匠とは、相互に類似する意匠として成立するものではないとした審決には、結局誤りはなく、ひいては、本願意匠が引用意匠に類似する(前示のとおり、このことは原告も争わないところである。)ものとして、意匠登録をすることができないとした審決は相当である。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却する。

〔編註〕 本件に関する別紙は左のとおりである。

別紙

(一)

<省略>

(二)

<省略>

<省略>

(三)

<省略>

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